地球の平和は、現在555人によって守られている。多すぎる。
密集戦隊!ゴヒャクゴジュウゴレンジャー。その名の通りメンバーは555人。赤だけで28人いる。アセロラレッドとケツニョウレッドは水と油。戦隊内に元カノが10人いる者もいれば、いろんな意味で兄弟姉妹もいる。ほとんどのメンバーは初対面であり、仲間同士でも全員の名前を覚えていない。敵が覚えられる見込みは、ない。
彼らの敵は怪人だけではない。むしろ怪人はまだ話が通じる方で、真の強敵はトイレ待ちの行列、交通費、洗濯、燃料、車検である。出動は高速バス(割引券)。遠征のたびに交通費の赤字で壊滅の危機を迎え、毎回だれかはおもらしする。
巨大ロボもある。正式名称、グレート アルティメット クライシス エクストリーム レジェンド パシフィック サステナブル ラベルレス アクアパッツァ ダークモカチップ ビッグ ジャイアントロボー。合体は大体失敗する。一度も完成したことがない。説明書は分厚すぎて誰も読まない。コックピットでは今日も操縦レバーの奪い合いが起きている。
それでも地球は、今日もだいたい平和である。全員が本気を出す必要はない。4割出せば余裕だからだ。立ち上がらないやつがいても、余裕。人数がチカラ。人数はキズナ。人数は大正義。
夏。レンジャーたちは三千九百九十九里浜で海水浴を満喫していた。真っ赤な太陽、白い砂浜、ウヨいフナムシ。地球は平和だった。この時までは。
その頃、とある百二郎系ラーメン店で事件が起きていた。「20分以内に完食しない客はお断り」を掲げる店主と、猫舌の怪人が口論の末、逆上した怪人はとんでもない宣言をする。この店をハッピークレープ屋にして、女子大生の映えスポットにしてやる——。
博士からの緊急通信で事件を知ったレンジャーたち。だが現場の見山羊県は、遠い。高速バスの割引券で延々と移動し、車内ではトイレをめぐって市民と衝突する。
シートベルト未着用で警察に追われ、ようやく到着した頃には、店はすでにハッピークレープ屋に改装済みだった。手遅れである。
それでも現れた怪人を前に、レンジャーたちは名乗り(ネーミングシャウト)を開始する。だが555人の自己紹介は、終わらない。いつまで経っても、終わらない。「残り243人」。「帰っていい?」。こうして記念すべき第一話は、戦いが始まりすらしないまま幕を閉じたのである。
その日、アジトのギスギス感は異常だった。おにぎりプリンとへその緒をめぐって仲間割れが勃発。その値、離婚調停7つ分。
そんな中、世界では人々が列に並ばず、協力しなくなる大混乱が発生していた。犯人は配膳怪人ゴニャンジュラ。人類から給食当番の記憶を奪い、協力する願望を消し去ったのだ。決戦の舞台は幻覚惑星・給食星。レンジャーたちは招かれるまま乗り込んでいく。
「自分を見つけ出せ」と隠れるゴニャンジュラ。探せば探すほど大量発生するニセモノの給食怪獣たち。そして炸裂する必殺技「カリーなるインフェルノ」。レンジャーたちはカレーの海に沈められてしまう。
カレーに溺れながら、レンジャーたちはカレーに込められた念から、ゴニャンジュラの記憶を幻視する。小学4年の給食当番でカレーをぶちまけ、笑われ、本当の名前を失った、ひとりの少年の姿を。
絶体絶命——かに見えたそのとき、マリッジブルーが冷静に指摘する。
実際は、足がつくくらいの深さだった。じゃがいもとニンジンで舟を作り、協力して海を渡るうちに、レンジャーたちは給食当番の大切さを思い出していく。そして555人に取り囲まれたゴニャンジュラに告げる。憎むべきは給食当番制度ではなく、失敗を許さない社会だ——。温かい光に包まれ、少年は過去の自分を許した。
「わたしたちは通りすがりの密集マニアよ」。そう言い残し、555人は去っていった。
483連敗。ゴヒャクゴジュウゴレンジャーは「人間園」の見世物として、動物の怪人に負け続けていた。もう逆フォーエバーである。
ことの始まりは3ヶ月前。市民が捕まって展示される謎の施設「人間園」のCMを見たレンジャーたちは、週末、行楽気分で潜入を開始する。
カバに乗ったツアーコンダクター・バンドウユミに出迎えられ、園内の展示を見物し、「秋の味覚フェア」で満腹に。だがその料理には、圧迫面接、満員電車、初恋失敗——人間の嫌がる成分が仕込まれていた。
体が、動かない。バンドウユミの正体は、セキララ怪人ぽにょつぃ〜。人間の身勝手な動物愛護に怒る彼女は、動物たちの怨念から生まれた動物怪人をけしかける。憂鬱成分に沈んだレンジャーは勝てない。負ける。また負ける。冒頭の483連敗である。
転機は、ひとつの閃きだった。動物怪人はぽにょつぃ〜の怪人エナジーが生んだ幻覚。本体を惑わせば消える。そして弱点は——動物。立ち上がったのは、クイズレンジャーだった。
誰にも解けない動物クイズの連打に、ぽにょつぃ〜は思わず答えては間違え続け、怪人エナジーは低下。動物怪人が消えた瞬間、555人で取り囲んでフルボッコ。かくして勝利したのである。人数は、大正義。
ネオンイエロー。その名を口にするだけで、554人がざわつく。「ネオンイエローがくるなら行かない」——OPでもEDでも歌われ続けてきた戦隊最大のタブーに、ついに物語が踏み込む。
舞台はヒーロー裁判所。開かれるのは、ネオンイエローをやめさせるかどうかを決める前代未聞の査問会。果たして裁かれるのか、裁くのか。
制作中。続報を待て。